2013年02月07日

ラベルの楽しさ(Chasse-Spleen2)

「ワイン界ではノスタルジーを抑えるようなマーケティングが
あるが、この素晴らしい名前を守るため、それには賛同でき
ない。ノスタルジーは憂愁(スプリーン)の中に溺れ、憂愁は
私たちのワインによって追い払われるのだから。
(La nostalgie se noie dans le spleen et le spleen est
chassé par notre vin.)」
これは、シャトー・シャス・スプリーンのホームページの冒頭の
一文です。

先日(1月24日付)で、シャトー・シャス・スプリーンのラベルの
事を書きました。すぐにも続きを書きたかったのですが、急用
や出張が重なったため遅くなりました。

Spleenというのは、ギリシャ語splen(脾臓)を語源とする言葉
で、イギリス人によって「暗い気分」の意味で使われました。
18世紀半ばにフランスに入り、「憂鬱」や、「人生に対する
嫌悪感」を表すようになります。

この言葉を一躍有名にしたのは、19世紀の詩人Charles
Beaudelaire (シャルル・ボードレール)の詩集“Le Spleen
de Paris" でしょう。
彼のもう一つの詩集「悪の華(Les Fleurs du Mal)」と相ま
って、Mal et Spleen du siècle(世紀の悪・世紀の憂愁)は、
19世紀の文学概念のひとつとなっていました。

しかしこの暗い思いを追ってくれるのがシャス・スプリーンです
(chasserは追い払うの意味)。

このシャトーの所有者は大変粋な人のようで、1998年フランス
サッカーチームがワールドカップで負けた時、選手たちの
憂いを払うために、選手全員にこのワインを送ったそうです。

また、2000年からはラベルの上部に詩句が入るようになり
ました。ちなみに2000年のは、ボードレールの1文で、
”J'ai plus de souvenirs que si j’avais mille ans.”
(私には1000年生きた以上の思い出がある)
-Beaudelaire Spleen et idéal “- 
  (-ボードレール:憂愁と理想より-  )

ラベルには、毎年違う詩が使われているので、集めると
しゃれたコレクションになるかと思います。素敵な詩がついて
いる年のワインを、恋人に贈るのもおしゃれですね。
今年のヴァレンタインデイにはチョコレートの代わりに
ワインを贈るというのはいかがでしょう。
Enivrez-vous des poèmes et du vin …

                          (2013年2月7日YM記)

posted by yoko at 04:06| デクヴェルト広場