2012年06月05日

元永定正さんと具体美術協会

元永定正氏の個展が、芦屋のAIR SPACEで開催されて
います。詳しくは6月3日付けのブログをご覧ください。
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元永氏は三重県生まれ、、関西で活躍した現代画家です。
見ていると元気が出てくるような形や色づかいの作品を
ご存知の方も多いと思います。

美術には門外漢の私がが元永氏のことを書くのはおこがましい
のですが、「具体」グループとフランスとの関わりを、個人的な
思い出も含めて、少し記しておきたいと思います。

時代背景
1954年(昭和29年)抽象美術の先駆者・吉原治良をリーダー
とする若い前衛芸術家のグループが阪神間に結成され
ました。これが「具体」グループです。

ここには、今も現役で活躍中のそうそうたる人たちが名を
連ねています。元永氏は創設メンバーではないけれと、
初期メンバーのひとりでであり、以前当教室のブログでご紹介
した松谷武判氏も、後期メンバーの一人です。


リーダーの吉原治良が掲げたグループのモットーはただ一つ、
「これまでにないものをつくれ」でした。
「具体」のメンバーだった元永氏もまた、この世に存在
しない作品しか作ろうとしない人物だったようです。


この「具体」グループを、高く評価し、世界に紹介したのが、
フランスの美術評論家ミシェル・タピエ(Michel TAPIÉ)
 でした。

当時のフランスは、Michel TAPIÉ等が提唱するアンフォルメル
(非定形)芸術の時代でした。
1957年来日したタピエは、日本で「具体」グループの芸術と
出会い、その質の高さに驚き、絶賛の言葉を送っています。

当初タピエは、日本でアンフォルメルを紹介し、何かしようと
提案するつもりだったようですが、来てみると、質の高い
「具体」の芸術が、既にしっかりと存在していたというのが、
事実のようです。

戦後わずか10年程の日本に、
こんなにも才能と気骨に溢れた若い芸術家たちが多出した
ことも嬉しいですし、それが阪神間で生まれたというのも
嬉しいことです。

ちなみに元永氏は、1977年にはフランス(カーニュ)の
国際美術展に出展、1988年にフランス政府より芸術・文芸
シュヴァリエ章を受賞されています。
私事ですが、80年代の半ば筆者も、当時のフランス総領事の
お伴をして氏の逆瀬川のマンションに伺ったことがあります。
25年くらい前のことですから、残念ながらどんな話が出た
のか全く覚えていません。

元永さんは、昨年10月に他界されたと聞きました。
謹んでご冥福をお祈りいたします。

そして、彼の作品がそれを見る者に、元気と勇気を与え
続けるよう祈っています。
閉塞感に包まれた今の時代にこそ。

ミシェル・タピエの「具体へのオマージ」の
一部を引用しておきます。

Hommage à Gutai
Michel TAPIÉ, 1957
J’ai cru depuis longtemps qu'un " groupe vivant"
était impensable aujourd'hui: un groupe n'est
rien d'autre que troupeau de stériles moutons
autour d'un prétendu berger.
Or, en cette ère de la contradiction, c'est le fait
de Monsieur Jirô YOSHI d'avoir magistralement
réalisé depuis quatre ans cet impensable.


「具体へのオマージュ」
「生き生きとしたグループ」などはあり得ない。
グループというのは、自称羊飼いのもとに集まる、子供を
産まない羊の群れに他ならないと、長年思っていた。
しかしこの矛盾に満ちた時代に、ヨシ・ジロー氏は4年前
から、このあり得ないことを立派に実現していた。
 - ミシェル・タピエ 1957 -
(資料;ホームページ「具体」より抜粋)

                   (2012年6月5日)

posted by yoko at 10:21| デクヴェルト広場