2012年05月15日

C'est cool

フランス語には、英語と同じ言葉でありながら、意味が異なる
ものがあります。たとえばpasserです。 英語のpassは、試験に
合格するの意味で使われていますが、フランス語のpasserは
受験するの意味になります。J’ai passé un examen” と
言うと、「私は受験した」という意味で、合格したかどうか
に触れていません。

フランス語で「私は試験に合格した」というのは、
”J’ai réussi a un examen”となります。
(またはJ’ai réussi un examenなどの同義の表現。)

Coolもそのひとつです。日本語で「彼はクールね」というと、
通常冷静で涼しげな感じの人のことを意味しますが、
フランス語で “Il est cool”,というと、リラックスしている人、
または感じがいい人(sympatique)の意味になります。
この「リラックスした」というのは、肩の力がぬけている、
というニュアンスに近いでしょう。

もともとクールは英語起源の言葉で、1950年代末か
1960年代始めにフランスに入って来ました。ロベールの仏々
辞書によると、calme et détendu (落ち着き、リラックス
している)とあります。
たとえば、Cool Papa (パパ、落ち着いて。)

くだけた表現なので、日常会話ではしょっちゅう出てきます。
それだけに筆者も最初は「何故こんなところにクールが
出てくるのだろう?」と、とまどったことがあります。
20年程前は確かに「リラックスしている」という意味で使われて
いることが多かったけれど、現在では、ほとんどの場合、感じが
いい(sympa)やかっこいいの意味で使われているようです。


ある受講生が、「彼は冷たい」と言おうとして、"Il est cool"
と言いました。これでは「彼は感じがいい」という、ほとんど
眞逆の意味になります。

このように日本人の持つクールというイメージは、フランス語の
クールにはとは異なります。

デクヴェルトではpasserやcool のようによく出現するが、
日仏で異なる意味に使われている言葉を「要注意語彙」の
中に入れています。

ところで、現在マンガやアニメなどのクリエイティヴ産業や、
料理や武道などの伝統文化、さらに日本のあらゆる文化を
海外に輸出促進しようとするCool Japan 政策が推進されて
いますが、このクールは、もっと後になって生まれた概念です。

語源的には1990年代半ばにイギリスのブレア内閣が推進した
クール・ブリタニアがもととなり、その後2002年にアメリカの
Douglas McGrayの“Japan’s Gross National Cool”
の記事に出現し、確立してきたようです。
(Japan’s Gross National Product”(日本の国民総生産)の
最後を“Cool”で置き換えているのがかっこいいですね。)

「クール」の「かっこいい」という意味も、その頃市民権を
得たのではないかと思います。

                   (2012年5月15日)
posted by yoko at 14:26| フランス語